(登壇報告)Tokyo Pride:Human Rights Conference

 2025年6月21日。TRP(東京レインボープライド)によるプライド月間の企画(Tokyo Pride)のイベントであるHuman Rights Conference に登壇しました。私が登壇したのは第3セッション「国際的な反ジェンダー運動を冷静に分析・対応するために」でした。松岡宗嗣さん司会のもと、福永弦弥さんと清水晶子さんと共に登壇しました。
 反ジェンダー運動(Anti-Gender Movement)は、90年代半ばに国際政治の舞台でSRHR(性と生殖に関する健康と権利)が謳われ始めたころに誕生した、バチカン発祥の国際的な政治的運動およびそれに付随して生じる現象をさす名称です。欧米の宗教団体からの資金が直接的に各地に投入されることもあれば、翻訳や人の移動を介した国際的な連携のかたちをとることもあり、ときにそれぞれの国や地域に合わせて、当地の保守的な指導者によって非明示的な仕方で担われることもある、それが反ジェンダー運動の難しさです。
 このセッションでは、とくに日本の過去のジェンダーバックラッシュを参照しつつ、「ジェンダー」への攻撃が排外主義とも結びつきながらどのように展開されてきたか、そしてそのなかで左派・リベラルの運動がどのような失敗をしてきたかということにも話が及びました。もちろん、日本のLGBT運動そしてTRPの過去と現在についても、わずかながらではありますが議論がなされました。本当はあと5時間くらい話していたかったですが、それはまた次の機会を待ちたいと思います。
 私はSRHRの活動をする者として、現在の反ジェンダー運動の最大の標的としてトランスジェンダーがやり玉にあがっていることに危機感を覚えていますし、それと同じくらい、現在のLGBT運動・トランスジェンダーの運動が、フェミニズムや障害の正義運動と孤立してしまいがちなことにも危機感を覚えています。国家における「あるべき家族」と「あるべき生殖」のあり方を定め、それに適合するように人間の性を管理しようとする、そのような人口管理の動機は、すぐさま「反ジェンダー」の思想の水脈と結合していきます。こうした認識についても、今後もっともっと周りと共有していく必要があると感じた1日でした。